前掲した土のトンネルの砲台を出て、少し歩くと四角いコンクリートの建造物が現れる。
地上の木にくくり付けてあるロープは掴み易い様ダンゴが付いており、洞内に垂れ下がっている。

覗き込むと、穴は真下に延びている様だ。
奥は闇である。

ロープ無しではとても上がれない。

中は割と広く、横幅2m前後、天井もすこししゃがむ程度の大きさ。
暗闇の中、光の射す所に向けて歩いていくと、コンクリートで作られた銃座が外に口を開けていた。
コンクリートで造成された銃座は、未だ平面と角が綺麗に残っている。
この壕の中には幾つかの銃座があるのだが、その中のひとつ。

砲身がボッキリと折(ら)れ、草むしている。
一番奥の銃座に鎮座する12インチ高角砲。
傾いている。
ここで”打ち方始め(撃て!)”すると、壕内は想像を絶する爆音がするはずである。
イルカ、クジラを追う船くらいしかいない今の初寝浦を見下ろす砲、設営隊の手によって掘られた広大な壕、彼らは設置から半世紀以上たった今、我々を目前に何を思うのであろうか?