大型特殊免許(平成10年取得、長野県内の教習所)
大型特殊である。仕事で必要な人以外は、普段生活してる分に、殆ど必要ない免許である。
取得した頃の自分は、冬は白馬、夏は高原で野菜の収穫という長野県内輪廻転生な生活を送っていた。
高原野菜バイトとは・・
夏の高原野菜をやる農家には大体アルバイトを雇い、そのための離れを用意してある。夏前になるとバイト誌にたくさん出てくるアレである。
高原野菜の朝は早い。アルバイトの出勤時間は大体朝5時。しかし雇用主の農家の家族は深夜1時から3時頃に起き出して畑に出て、発電機で照明を灯し収穫を開始する。収穫が終わったら畑でおにぎり朝ごはんの後、箱詰めした野菜を出荷、また別な野菜を刈り入れる。
中盤の10時におやつ時間。どこの農家でも用意されてるのが菓子パンにゼリーにお菓子がふんだんに盛り込まれたカゴからたらふく食べさせてもらえる。これが農家にとってもバイトにとっても相当効果のある息抜きの時間だった様に思う。同じく16時にもおやつ有り!
オヒルは、作ってる時間がどの農家も無いので、宅配弁当を与えられる。飯食ったら即昼寝!どの家も14時までの昼休み。これでかなり体力が戻る。この2時間は村内が静まり返る。高原野菜農家に午後一の訪問は避けよう。
おかげでトラック乗りの未だ昼寝の習慣が抜けず、仕事上の一つの楽しみになってしまっている。
14時から午後の部が始まり、苗植えや、箱詰め用ダンボール組み立てなどを18時くらいまでして一日が終わる。離れに作ってあるバイト用風呂で湯を済ませ晩御飯を母屋で頂く、寝るのは22時以前だったような気が・・・
農家は6月から10月までは殆ど休みなくこの生活を繰り返し、一年以上暮らせる収益を得る。
給料は一日8000円。決して高くは無いが飯、おやつ、個室付き、1シ−ズンやれば100万近くにはなり終了時には一括で貰える。内金もOK!
トラクター
農家にはヒトの身長位大きなタイヤの付いている数百万する高価なトラクターが1〜数台あり、安全上の事もあり基本的には雇用主しか乗らないが畑、敷地内の移動等は任されることもあった。
現在は規制緩和で小型特殊扱いになっており、原付免許さえあれば誰でも乗れるのだが、当時は普通ナンバーの付いた大型特殊車両(限定が付く場合:農耕車に限る)だった。
バイトとして必要では無かったが、大型免許から更なる免許の幅を広げる為、又この仕事をふた夏勤めた軌跡として、大型特殊免許を取る事を決めた!
昨年も勤めた農家なので、シーズンより少し早く離れに入れてもらい、半日仕事を手伝いながら、車で一時間ほどの教習所に通うことに決めた。
公認大特の必要時間は6時間。たった6時間なのだが入学金などを入れると9万円を越えてしまう。しかしこの頃は余裕があったため何の疑問も抱かず入校。大特は教習生も少かったので一気に予約を入れてもらう。
教習開始
1〜2時間目に乗ってくれた教官は、割と穏やかな人で、大特は面白いぞ〜とこれから未知の乗り物に乗る気分を盛り上げてもくれた。シフトレバーはハンドルの左ににょきっと生えており俗に言うコラムシフトか?乗用車ではワイパー操作レバーの位置。走行は3速オートマの通常は2速入れっぱなし。同じところにもう一本、FとRの表記がある前後進レバーもある。
ステアリング感が・・・
しかしハンドルは左手でスピンナーを握って操作する。ハンドル操作とシフト操作は同時には出来ない。利き手である右手はどうするか?ウインカー操作時以外、基本的には斜め前のピラーにあるグリップを握っておきなさとの事だ。
ハンドルは殆どアソビが無くずいぶんシビアだ。軽く手を掛けただけでも、車体を真ん中から曲げる油圧装置がぐしぐしと音を立てて反応する。どうやら円形のハンドルは油圧シリンダーを制御する為の便宜上のものであり、乗用車のステアリング構造とは違い、手放しで直進状態に戻らない為、自分の手で一生懸命戻さなければならない。もう一つ面倒なことにハンドルを戻してもウインカーは切れない。バイクの様に自分の手で忘れないよう戻す。
唯一の救いは内輪差が無いという事。左折時などは角にタイヤを思いっきり添わせたら曲げればよい。曲がり角を抜けたら適切な位置に素早くハンドルを戻さなければ車体はまっすぐにならない。遅れても戻しすぎてもふらつくのだ。
やっぱり下手かオレ
次の日、3〜4時時限に乗って貰った教官は中々厳しい人で、遅れがちになるハンドル戻しや、ミスをバシバシ指摘された。何せクルマが乗りにくい、直進時でもぐあんぐあんと爆音を立て斜め前に揺れながら進む。コツをつかむのに時間がかかった。
教習は6時間教程なので、3日目にしてもう見きわめ。走行はオートマなので、アクセルは踏むだけ。卒検のコースを回りながら、ハンドルの戻し方をさんざん練習。とりあえず卒検へのチャレンジ権を獲得する。
卒研
みきわめより3日ほどあとに卒業検定を受検、検定員は3時間目に乗ったうるさ方教官・・
動揺を伴うも、何とか無事故で完走。後ほど点数を聞いたけど、そんなに良く無かったが”合格”をもらうことが出来た。
これで心置きなく農作業に従事できるぞと思ったが、どういうわけか教習所通いの生活は終わらなかった。(普二輪に続く・・・)