島のあちこちにあるトーチカを巡っていると、何故だかそれが在りそうな場所が勘で分かってくる。それは、呼ばれているような感覚に似ている。

バイクに乗って夜明山道路を清瀬方面から上っていき、初寝浦を越え、NASDA施設を通り過ぎた所の右側に沢があった。
沢の上流を見上げると、木が生い茂って先が見えない。しかし、暗いのではなく”闇”を感じた。

沢を駆け上ると、明らかな人工物である銃座の付いた防護壁と、その奥に続く洞窟があった。

中は真っ暗で狭い。腰をかがめて歩かなければならない。
10歩も歩くと前後が闇。
壕の中は階段になり、上方へ導かれる。

知らない壕に一人で入ると、何処に続いてるか空気が通っているのか全く分からない。
落盤しても誰も気がつかないだろう。
無謀な行動だ。
急な階段で枝分かれしている。
どっちへ行けば出れるのか?
分岐が連続すれば迷うのは必至だろう。
急な階段を上ったら、銃座があった。

小高い丘に口を開けているのだろうが、横に30cm位しか銃座が無いのでココからは出られない。
銃座への階段を戻り、奥へ進むと日の光が見え、大きな銃座から外へ出る事が出来た。
ものの一、二分で一気に駆け抜けたはずだが、随分長く感じた。